8月22日(金)イベント告知2014/08/16 10:14

長岡鉄男氏のムック本「現代に甦る、究極のオーディオ 観音力」では、都合3機種の長岡スピーカーを復刻しました。うち1機種、D-3MkIIは横幅を4cm広げた(改)バージョンです。詳しくは以前にエントリで紹介しているので、そちらをご参照いただけると幸いです。


現代に甦る、究極のオーディオ 観音力
長岡鉄男・著 音楽之友社 ¥1,800+税

幸い、今回製作したD-3MkII改MX-1MX-10はどれも素晴らしい鳴りっぷりを聴かせてくれましたが、いくら誌面で「いいぞいいぞ」と書いても実際に音が聴こえてこなければそれがどれほどいいものかは読者にお分かりいただけません。われわれオーディオ・ジャーナリズムに携わる者すべてに共通するジレンマでもありますが、ことに自作オーディオ関連は市販のオーディオ機器と違ってオーディオショップへ行けば聴けるというものでもなし、事態は切実です。

D-3MkII改
D-3MkII改。一見すると単なる懐かしいルックスの長岡BHなのだが、少なくとも商業誌に図面つきで載ったのはこれが初めてではないか。

MX-1
MX-1。長岡氏が「夢の中で思いついた」という伝説が残る作例で、これ1本だけで部屋中に広がる超サラウンド音場を堪能することができるという「異能スピーカー」である。

MX-10
MX-10。低音がやや不足することが唯一の欠点と思われたMX-1に対して、長岡氏はMX-2以降長い旅をたどり、到達した「最終結論」というべき作例である。現代のFE103-Solでは別段MX-1でもそう低音不足は感じさせないが、やはり聴き比べるとローエンドの伸びと再生音の雄大さには大きな違いがある。

以前、「外盤A級セレクション(1)」の復刻版が出版された際には、それはそれはいろいろな会場で同書に掲載された音源を鳴らすイベントをやらせてもらいました。手近なところでは自転車で15分オーディオスクェア越谷レイクタウン店から、遠くは大阪の河口無線まで、使わせてもらえる会場があれば飛んでいって"ゲテモノ"を含む長岡A級ソフトを鳴らしまくったものであります。

外盤A級セレクション(1)

新・長岡鉄男の外盤A級セレクション(1)
長岡鉄男・著 共同通信社 ¥3,800+税

そんな中にアコースティックデザインシステムの本社ショールームもありました。同社は、個人的に「最高の音が楽しめる」と堅く信ずる防音室を設計・施工する会社で、東京・九段の自社ショールームへ山之内正氏や麻倉怜士氏ほかを招聘し、音楽とオーディオがクロスオーバーした「アコースティック・オーディオ・フォーラム」という定期的な催しを続けていることでも知られます。

このたび同フォーラムの番外編として、ムックで製作したスピーカーを鳴らすイベントを開催させてもらえることとなりました。開催期日は8月の22日(金)午後6時30分頃から、お客さんがお見えになり次第ゆるゆると始めていきたいと思います。大体2時間ちょっとくらいのイベントになると思います。

同社の鈴木泰之代表はとにかくオーディオにも音楽にも造詣が深く、もちろん室内音響工学に関しては有数の知見とノウハウ、施工技術を持つ人です。面白いのは、日本大学の建築研究室で長く実験を繰り広げ、音元出版「オーディオアクセサリー」誌に「6畳間のオーディオ学」という連載をずっと持っていらした、オーディオ評論家にして現・デジタルハリウッド大学・学長の杉山知之氏が長年の研究で到達された結論が、アコースティック鈴木代表の造られる防音室の室内音響特性のまとめ方とほぼ完璧に一致しているのですね。

オーディオアクセサリー」誌でお2人の対談が記事になっていたのですが、あとで鈴木代表からお話を伺うまで、お2人は長い付き合いの知人同士だと思い込んでいました。それが、「いや、たまたま結論が同じになっただけで、対談が初対面だったんですよ」と聞いた時にはたまげましたねぇ。そんなことってあるもんだと。

おそらくお2人は「同じ山を別々に登り、山頂で出会った」ということなんだろうと思っています。オーディオの世界はアプローチする"登山口"が星の数ほどあるので、「ハイ・フィデリティ」という同じ山を登っていても別々の方法論で同一の地点へたどり着くことが極めて少ない業界なんですが、厳格な学術の世界ではこうも見事に複数の研究者が結論を共有することができるんだな、と驚くやらうらやましいやら。科学っていいですね。

そんなアコースティック社の防音室は、世に数多ある楽器練習室のように部屋の響きをいたずらに殺すことはせず、美しい響きを持ちながら嫌な癖がなく、オーディオ的にも突っ込んだ解像度や描写能力を聴かせながら音楽をゆったりと楽しむことができるという「夢の空間」です。ご自宅の新築を考えておられる人、リスニングルームのリフォームを考えておられる人は、一度問い合わせてみられるとよいのではないかと思います。

そんな同社のショールームで長岡鉄男氏の傑作スピーカーを鳴らす。しかもおおよそ30年ぶりにもなるかという「マトリックス・スピーカー」の復刻と、氏が生前「やる気があったらできる」と書き残された横幅の拡幅を再現したバックロードホーンの競演なのですから、ファンとしてはたまらない会になるんじゃないかと思います。

当日はマトリックス向けの音場ソフトと長岡A級外盤、そして最近の新譜からめぼしいものを何枚も持っていこうと思っています。お客さんが持参されたソフトも随時かけられるようにしたいものですね。

残念ながらショールームの収容人数に限りがあるので、イベントは予約制になります。詳しくは下記のアドレスを訪問してみて下さい。会場は地下鉄の九段下駅から徒歩数分、靖国神社の大村益次郎像を右折して道へ出て左折するとほんの数mのところです。当日、皆様とお会いできることを楽しみにしています。

(株)アコースティック・エンジニアリング ホームページ
http://www.acoustic-eng.co.jp/

アコースティック・オーディオ・フォーラム受付
http://acaudio.jp/

8月22日(金)イベント告知 ~補足~2014/08/21 01:07

昨日、「今日ならうちのワンボックスが出せるよ」と鈴木代表に誘っていただいたものですから、22日(金)のイベントで鳴らすスピーカーを九段アコースティック・デザインシステムのショールームへ搬入してきました。スピーカーはレンタカーを借りて運ぶつもりだったので大いに助かった次第です。鈴木代表のお気遣いに感謝。

搬入したら鳴らしてみたくなるのが人情というもので、早速同ショールーム常備のシステムを接続して鳴らしてみたんですが、しばらく倉庫でアクビをしていたスピーカーばかりなもので、まぁ何とも寝ぼけてガサついた不快な音です。こりゃいけないとたまたま鞄に入っていた試聴用CDケースからどんどん盤を引っ張り出してかけ続けたら、さすが一度は鳴らし込んだ個体だけにそれほど時間をかけることなく目が覚めてくれるようです。

「それじゃ当日まで適当にいろいろ鳴らしておくよ」と鈴木代表。お世話になります。これで当日にはそこそこ以上のコンディションで皆様のお耳にかかれるかと思います。

で、当日なんですが、「どうせならついでに聴けない?」という鈴木代表のリクエストで、私の作例「カモハクチョウ」も持ってきてしまいました。当然のことながら主役は長岡先生の3モデルですから、ほんのちょっとしたお披露目ということになると思いますが、個人的にも近年稀な大成功作だと思っているので、皆様にもちょっとだけお聴きいただけると光栄です。

カモハクチョウ
月刊ステレオ2014年8月号に掲載されたわが作例「シギダチョウ」。私が取材日を間違えるという大失態を犯したせいで試聴会の間に合わず、おかげでコイズミ無線などの鳴き合わせの会にも連れて行ってもらえなかったものだから、まだほとんど誰にも聴いてもらっておらず、今回が初お目見えとなる。どうかお手柔らかにお願いできると幸いである。

ところで、アコースティック社ショールームとわが家における「カモハクチョウ」の鳴り方の違いには唖然とせざるを得ませんでした。わが家では「できるだけ音楽の勢いを殺さないように」と、デッドスペースへ入れる砂袋を最小限にしていたのですが、同社ショールームではとてもそれくらいのデッドニングでは収まらず、かなり強めのボンつきが聴こえてきます。

スピーカーというのは多かれ少なかれこういう要素を持っているものではありますが、自作スピーカー、なかんずくフルレンジBHでというと、この要素が大いに強まってしまうものでもあるなぁ、というのが正直なところです。わがリスニングルームはごく普通の木造洋間ですから低音が抜けやすく、それでやや過剰気味にBHを躾けてしまったところ、アコースティック社の高度な防音室は低域が全く洩れず、しかもわが家と違って適度な響きもついているものですから、意図的に残した最後の僅かなボン付きが何倍にも大きく耳へ届いてしまった、ということなんでしょうね。

というわけで、当日は砂袋をいくつも持ち込み、早めに会場入りして再チューニングにかかる予定です。皆さんがお見え下さる頃にはあの部屋にふさわしいチューニングに仕上げられていたらいいんですが。

それでは当日、皆様とお会いできることを楽しみにしています。

(株)アコースティック・エンジニアリング ホームページ
http://www.acoustic-eng.co.jp/

アコースティック・オーディオ・フォーラム受付
http://acaudio.jp/