わがリファレンス・システム(デジタル&アンプ編)2014/01/24 11:42

わが家のリファレンス・システムについて、解説しておきましょうか。といったってそう立派な装置を使っているわけじゃありません。高額の機器はほとんどが借り物で、自腹を切って購入している製品は本当にたかが知れています。

DV-AX10

パイオニア DV-AX10 1998年発売 ¥500,000(当時、税抜き)

M-AX10

パイオニア M-AX10 1998年発売 ¥450,000(当時、税抜き)

デジタルプレーヤーのパイオニアDV-AX10とパワーアンプの同M-AX10は、もう発売から15年近くもたった骨董品ですが、発売当初に貸してくれたのをいいことにいまだ愛用させてもらっています。音質的にもややソフトな質感ながらいまだ第一線を張ることが可能な機器たちだと思っています。思えばこのクオリティで20世紀の終わりごろに登場した製品なのですから、あの頃はまだ日本のオーディオメーカーにたっぷりと余力が残っていたんだなぁ、と思わずにいられません。

C-AX10

パイオニア C-AX10 1998年発売 ¥550,000(当時、税抜き)

プリアンプのC-AX10もつい昨年まで長年にわたって愛用してきた、というよりC-AX10があって初めてわが家のリファレンスは成立する、というくらい深くあの傑作プリに依存したシステム構成で長年やってきました。でも、一昨年あたりからアナログ関連の音質がどうしようもなく悪化し、C-AX10のフォノイコ(何と96kHz/24ビットのデジタル方式なのです!)も若干歪みっぽくなってきたような気がしたので、パイオニアに無理をお願いして修理に出したと思ったら、きっと修理不能だったのでしょうね。帰ってこなくなってしまいました。

かの名作C-AX10を長年にわたって愛用・酷使させてもらったパイオニアには、感謝のほかありません。M-AX10とDV-AX10もいよいよ動かなくなるまで、もうしばらく使わせてもらえると助かります。

B-2302Vintage

サンスイ B-2302Vintage 1990年発売 ¥740,000(当時、税抜き)

パワーアンプはもう1台、もっと古い製品ですがサンスイB-2302Vintageもあります。もう時効だろうから書いてもいいかな。このアンプは方舟で長く故・長岡鉄男氏が使われた個体です。生産完了になり、アキュフェーズのP-1000に方舟のリファレンスが交代した時、ちょうどその場に居合わせた私は「それじゃサンスイは私が返却しておきますよ」と自分の車に乗せて編集部へ持ち帰りました。

で、返却しようとサンスイへ連絡したら、「もううちで引き取っても廃棄処分にするだけですし、よろしかったら炭山さん、お使いになりませんか?」と広報担当氏がおっしゃって下さったので、二つ返事でもらってしまったのでした。それから数年を経ずして長岡氏は亡くなられてしまい、結果的にこのアンプは先生の"形見"となってしまったので、もう一生手放すことができなくなりました。

あの当時サンスイの窓口を一手に引き受けて下さっていたKさん、お元気かなぁ。

その後B-2302Vはトライオードが行っていた修理サービスTARESの手によって新品同様に生まれ変わり、今もわが家のリファレンスの一角を務めてくれています。

PX-650

アキュフェーズ 6chパワーアンプ PX-650 2005年発売 ¥660,000(当時、税抜き)

スピーカーについてはまた別のエントリを立てますが、基本的にはフルレンジのバックロードホーン(BH)とマルチアンプによるマルチウェイ・スピーカーの両刀遣いで長くやってきました。そもそもの始まりは、オーディベーシック誌で何号かに分けて行ったマルチアンプ・マルチウェイの実験からで、その際に借りたアキュフェーズのチャンネルデバイダーDF-45とマルチチャンネル・パワーアンプPX-650は、アキュフェーズの好意に甘えてずいぶん長く使わせてもらってしまいました。

DF-55

アキュフェーズ デジタル・チャンネルデバイダー DF-55 ¥750,000(税抜き)

DF-45はその後DF-55にモデルチェンジを果たしました。両方ともわが家で聴きましたが、想像以上に音質差が大きかったのに驚いたことを覚えています。DF-45単体で使っている分には、音質は素晴らしいし扱い勝手は極めて簡易だし、これ以上のチャンデバは世の中に存在しないだろうななどと思わせるものがありましたが、DF-55と取り替えたら音がよりくっきりと鮮やかになり、より高度なマルチアンプ・サウンドをものにしているような気にさせてくれたものです。

PX-650はアキュフェーズ初の、そして現在のところ唯一のPWM方式高効率アンプですが、これがわが家へやってきた時にはいわゆる「パラダイム・シフト」の感覚を味わうこととなりました。それまでB-2302Vをウーファーに、M-AX10を4chモードにして中~高域に使ったマルチアンプを実践していたのですが、PX-650はまるで別次元のウルトラハイスピードを聴かせます。もう何だかまるっきりオーディオの概念そのものがひっくり返ってしまいそうな大きな違いに目を白黒させたことを覚えています。

ハイスピードでハイパワーの恐るべきサウンドが構築されたのですが、その一方でB-2302V+M-AX10に比べて何となく音数が減るというか、いや、音数そのものは存分に表現されるのですが、音像と音像の間にある空気の濃厚さというか、色合いが重なった時の中間調の複雑さというかがどこか整理されてしまったような印象を受けたのも事実です。しかし、それも鳴らし続けていたらまったく気にならなくなってしまいました。いやPX-650、まことに恐るべきアンプです。

わが家のPX-650は受難続きで、設置してから2度も落雷の被害に遭い(といっても直撃じゃなくて近隣に落ちたようです)、アキュフェーズへ送り返すということを繰り返す羽目となりました。2度目などは何と基板のパターンがはがれてしまっていたそうで、「現場がもうダメだといってるんでこれ、捨てちゃいますよ」と広報のIさんから連絡をもらったほどです。

わが家のマルチは最盛期で5ウェイまでいっていたもので、PX-650を2台借りてウーファーのみBTL駆動とし、残りの4chで上の4ウェイを鳴らしていましたが、落雷騒ぎなどでアンプがなくなり(1台は何とか都合してくれたんですが)、その後チャンデバも返却して、今は事実上BHのみで音を聴くこととなっています。近々マルチも再興する予定ですが、しばらくは難しいかなぁ。

アキュフェーズの製品が最初にわが家へやってきたのは、ひょんなことがきっかけでした。オーディオアクセサリー誌でシングルレイヤーSACDの試聴記事を頼まれ、さぁ音楽を聴こうという段になって愛用のDV-AX10が動かなくなってしまったのです。慌ててパイオニアに修理は依頼したものの、このままでは締め切りの間に合いません。それでオーディオアクセサリー編集部に「何でもいいからSACDのかかるデジタルプレーヤーがお手元に空いていませんか?」と連絡したら、すぐ送ってくれたのがアキュフェーズのプレーヤーだった、というわけです。

DP-100_DC-101

アキュフェーズ デジタルトランスポートおよびD/Aコンバーター
DP-100/DC-101 2000年発売 ¥1,500,000(セット 当時、税抜き)

送られてきたのは何とDP-100/DC-101のセットでした。世界初のセパレートSACDプレーヤーです。最初に音を聴いた時には、本当にたまげましたね。SACDはいうに及ばず、CDであっても真に優れた内容の持ち主であれば、これまでのどのプレーヤーでも聴き得なかった"芸術の真髄"を聴かせてくれました。トップローディングのメカニズムへディスクを装填してから音が出るまで数十秒かかるのが唯一の難点でしたが、それも音と引き換えならばそう苦にもなりません。本当にいいプレーヤーでした。

そろそろメカが古くなってきたのか、特にSACDが読めたり読めなかったりし始めた頃、まぁ見計らったように音元出版の編集K氏から連絡がありました。曰く「うちの試聴室に新しいDP-900/DC-901を入れたんですが、これまで使っていたDP-800/DC-801をお使いになりませんか?」。

DP-800_DC-801

アキュフェーズ デジタルトランスポートおよびD/Aコンバーター DP-800/DC-801 2006年発売 ¥1,800,000(セット 当時、税抜き)

身に余る光栄とすぐ送ってもらいましたが、この時も驚きましたねぇ。いい加減DP-100/DC-101で高音質なんて飽和しちゃっているんじゃないかなんて思っていたら、まだまだ上があるんですから。遥かな高みを垣間見せる芸術の薫りに加え、接続したオーディオシステムをがっちりと支配して強制的に揺さぶるような轟然たる爆発力、石造建築の揺るぎなさと重量感といったものまで存分に表現する懐の深さというか"清濁併せ呑む"ような凄みを感じさせる音でした。

これもずいぶん長く使わせてもらいましたが、DP-800のメカニズムがダウンしてリタイアしました。何といっても音元出版で長年酷使された個体です。おそらく一般ユーザーの数十年分くらいは働いてくれていたのではないかな。修理を頼んで使い続けようかとも思ったんですが、こっそり打ち明けるとセパレート型のデジタルプレーヤーは当然のことながら筐体が2つとなり、わが家のラックへ収めるのが大変なものですから、そのまま返却してしまいました。

というわけで、回りまわってリファレンス・デジタルプレーヤーは再び修理を終え手元へ戻ってきてくれていたパイオニアDV-AX10へ。アキュフェーズから3分の1以下の価格のパイオニアへ戻したんですから、当初はやっぱりいろいろと寂しかったり食い足りなかったりもしましたが、使っているうちにもうすっかり身になじみ、今となっては手放せない文字通りのリファレンスとなっています。

長々と書いてきましたが、現在のわが家リファレンス・システムはDV-AX10からM-AX10(BTLモード)へ直結、BHをつなぐというこれ以上ないシンプルなものになっています。C-AX10がなくなってしまい、代替のプリを導入することがかなわないものですからもうこれで致し方ないのですが、プリは早急に何とかしなきゃいけませんね。扱い勝手も悪いし、何より試聴に手間がかかっていけません。

そのうち自作するしかないかなぁ、などとまた良からぬことを考えているところです。自作といったって基板キットを買ってきて自分なりにアレンジしようというだけですけどね。やると決めたらまたこちらで連載しようと思っています。

アナログ関連とスピーカーは、追って別エントリを立てますね。

仕様変更~文字を大きく2014/01/24 17:34

小生、自分が老眼のクセにブログの文字がずいぶん小さいことを気には病んでいたんですが、「眼鏡をかけたら見えるからいいか」と放置していました。でも、やっぱりこれじゃ見えにくいこと甚だしいというものですよね。

というわけで、ご同輩からお叱りを頂く前に、fontタグを使って1段階文字を大きくしました。デフォルトで文字のポイント数を決められるとよいのですが、どうもやり方が分からなかったもので、逐次やっていくこととします。

これからも末永くお付き合いを賜りますよう、お願い申し上げる次第です。