わがリファレンス・システム(デジタル&アンプ編)2014/01/24 11:42

わが家のリファレンス・システムについて、解説しておきましょうか。といったってそう立派な装置を使っているわけじゃありません。高額の機器はほとんどが借り物で、自腹を切って購入している製品は本当にたかが知れています。

DV-AX10

パイオニア DV-AX10 1998年発売 ¥500,000(当時、税抜き)

M-AX10

パイオニア M-AX10 1998年発売 ¥450,000(当時、税抜き)

デジタルプレーヤーのパイオニアDV-AX10とパワーアンプの同M-AX10は、もう発売から15年近くもたった骨董品ですが、発売当初に貸してくれたのをいいことにいまだ愛用させてもらっています。音質的にもややソフトな質感ながらいまだ第一線を張ることが可能な機器たちだと思っています。思えばこのクオリティで20世紀の終わりごろに登場した製品なのですから、あの頃はまだ日本のオーディオメーカーにたっぷりと余力が残っていたんだなぁ、と思わずにいられません。

C-AX10

パイオニア C-AX10 1998年発売 ¥550,000(当時、税抜き)

プリアンプのC-AX10もつい昨年まで長年にわたって愛用してきた、というよりC-AX10があって初めてわが家のリファレンスは成立する、というくらい深くあの傑作プリに依存したシステム構成で長年やってきました。でも、一昨年あたりからアナログ関連の音質がどうしようもなく悪化し、C-AX10のフォノイコ(何と96kHz/24ビットのデジタル方式なのです!)も若干歪みっぽくなってきたような気がしたので、パイオニアに無理をお願いして修理に出したと思ったら、きっと修理不能だったのでしょうね。帰ってこなくなってしまいました。

かの名作C-AX10を長年にわたって愛用・酷使させてもらったパイオニアには、感謝のほかありません。M-AX10とDV-AX10もいよいよ動かなくなるまで、もうしばらく使わせてもらえると助かります。

B-2302Vintage

サンスイ B-2302Vintage 1990年発売 ¥740,000(当時、税抜き)

パワーアンプはもう1台、もっと古い製品ですがサンスイB-2302Vintageもあります。もう時効だろうから書いてもいいかな。このアンプは方舟で長く故・長岡鉄男氏が使われた個体です。生産完了になり、アキュフェーズのP-1000に方舟のリファレンスが交代した時、ちょうどその場に居合わせた私は「それじゃサンスイは私が返却しておきますよ」と自分の車に乗せて編集部へ持ち帰りました。

で、返却しようとサンスイへ連絡したら、「もううちで引き取っても廃棄処分にするだけですし、よろしかったら炭山さん、お使いになりませんか?」と広報担当氏がおっしゃって下さったので、二つ返事でもらってしまったのでした。それから数年を経ずして長岡氏は亡くなられてしまい、結果的にこのアンプは先生の"形見"となってしまったので、もう一生手放すことができなくなりました。

あの当時サンスイの窓口を一手に引き受けて下さっていたKさん、お元気かなぁ。

その後B-2302Vはトライオードが行っていた修理サービスTARESの手によって新品同様に生まれ変わり、今もわが家のリファレンスの一角を務めてくれています。

PX-650

アキュフェーズ 6chパワーアンプ PX-650 2005年発売 ¥660,000(当時、税抜き)

スピーカーについてはまた別のエントリを立てますが、基本的にはフルレンジのバックロードホーン(BH)とマルチアンプによるマルチウェイ・スピーカーの両刀遣いで長くやってきました。そもそもの始まりは、オーディベーシック誌で何号かに分けて行ったマルチアンプ・マルチウェイの実験からで、その際に借りたアキュフェーズのチャンネルデバイダーDF-45とマルチチャンネル・パワーアンプPX-650は、アキュフェーズの好意に甘えてずいぶん長く使わせてもらってしまいました。

DF-55

アキュフェーズ デジタル・チャンネルデバイダー DF-55 ¥750,000(税抜き)

DF-45はその後DF-55にモデルチェンジを果たしました。両方ともわが家で聴きましたが、想像以上に音質差が大きかったのに驚いたことを覚えています。DF-45単体で使っている分には、音質は素晴らしいし扱い勝手は極めて簡易だし、これ以上のチャンデバは世の中に存在しないだろうななどと思わせるものがありましたが、DF-55と取り替えたら音がよりくっきりと鮮やかになり、より高度なマルチアンプ・サウンドをものにしているような気にさせてくれたものです。

PX-650はアキュフェーズ初の、そして現在のところ唯一のPWM方式高効率アンプですが、これがわが家へやってきた時にはいわゆる「パラダイム・シフト」の感覚を味わうこととなりました。それまでB-2302Vをウーファーに、M-AX10を4chモードにして中~高域に使ったマルチアンプを実践していたのですが、PX-650はまるで別次元のウルトラハイスピードを聴かせます。もう何だかまるっきりオーディオの概念そのものがひっくり返ってしまいそうな大きな違いに目を白黒させたことを覚えています。

ハイスピードでハイパワーの恐るべきサウンドが構築されたのですが、その一方でB-2302V+M-AX10に比べて何となく音数が減るというか、いや、音数そのものは存分に表現されるのですが、音像と音像の間にある空気の濃厚さというか、色合いが重なった時の中間調の複雑さというかがどこか整理されてしまったような印象を受けたのも事実です。しかし、それも鳴らし続けていたらまったく気にならなくなってしまいました。いやPX-650、まことに恐るべきアンプです。

わが家のPX-650は受難続きで、設置してから2度も落雷の被害に遭い(といっても直撃じゃなくて近隣に落ちたようです)、アキュフェーズへ送り返すということを繰り返す羽目となりました。2度目などは何と基板のパターンがはがれてしまっていたそうで、「現場がもうダメだといってるんでこれ、捨てちゃいますよ」と広報のIさんから連絡をもらったほどです。

わが家のマルチは最盛期で5ウェイまでいっていたもので、PX-650を2台借りてウーファーのみBTL駆動とし、残りの4chで上の4ウェイを鳴らしていましたが、落雷騒ぎなどでアンプがなくなり(1台は何とか都合してくれたんですが)、その後チャンデバも返却して、今は事実上BHのみで音を聴くこととなっています。近々マルチも再興する予定ですが、しばらくは難しいかなぁ。

アキュフェーズの製品が最初にわが家へやってきたのは、ひょんなことがきっかけでした。オーディオアクセサリー誌でシングルレイヤーSACDの試聴記事を頼まれ、さぁ音楽を聴こうという段になって愛用のDV-AX10が動かなくなってしまったのです。慌ててパイオニアに修理は依頼したものの、このままでは締め切りの間に合いません。それでオーディオアクセサリー編集部に「何でもいいからSACDのかかるデジタルプレーヤーがお手元に空いていませんか?」と連絡したら、すぐ送ってくれたのがアキュフェーズのプレーヤーだった、というわけです。

DP-100_DC-101

アキュフェーズ デジタルトランスポートおよびD/Aコンバーター
DP-100/DC-101 2000年発売 ¥1,500,000(セット 当時、税抜き)

送られてきたのは何とDP-100/DC-101のセットでした。世界初のセパレートSACDプレーヤーです。最初に音を聴いた時には、本当にたまげましたね。SACDはいうに及ばず、CDであっても真に優れた内容の持ち主であれば、これまでのどのプレーヤーでも聴き得なかった"芸術の真髄"を聴かせてくれました。トップローディングのメカニズムへディスクを装填してから音が出るまで数十秒かかるのが唯一の難点でしたが、それも音と引き換えならばそう苦にもなりません。本当にいいプレーヤーでした。

そろそろメカが古くなってきたのか、特にSACDが読めたり読めなかったりし始めた頃、まぁ見計らったように音元出版の編集K氏から連絡がありました。曰く「うちの試聴室に新しいDP-900/DC-901を入れたんですが、これまで使っていたDP-800/DC-801をお使いになりませんか?」。

DP-800_DC-801

アキュフェーズ デジタルトランスポートおよびD/Aコンバーター DP-800/DC-801 2006年発売 ¥1,800,000(セット 当時、税抜き)

身に余る光栄とすぐ送ってもらいましたが、この時も驚きましたねぇ。いい加減DP-100/DC-101で高音質なんて飽和しちゃっているんじゃないかなんて思っていたら、まだまだ上があるんですから。遥かな高みを垣間見せる芸術の薫りに加え、接続したオーディオシステムをがっちりと支配して強制的に揺さぶるような轟然たる爆発力、石造建築の揺るぎなさと重量感といったものまで存分に表現する懐の深さというか"清濁併せ呑む"ような凄みを感じさせる音でした。

これもずいぶん長く使わせてもらいましたが、DP-800のメカニズムがダウンしてリタイアしました。何といっても音元出版で長年酷使された個体です。おそらく一般ユーザーの数十年分くらいは働いてくれていたのではないかな。修理を頼んで使い続けようかとも思ったんですが、こっそり打ち明けるとセパレート型のデジタルプレーヤーは当然のことながら筐体が2つとなり、わが家のラックへ収めるのが大変なものですから、そのまま返却してしまいました。

というわけで、回りまわってリファレンス・デジタルプレーヤーは再び修理を終え手元へ戻ってきてくれていたパイオニアDV-AX10へ。アキュフェーズから3分の1以下の価格のパイオニアへ戻したんですから、当初はやっぱりいろいろと寂しかったり食い足りなかったりもしましたが、使っているうちにもうすっかり身になじみ、今となっては手放せない文字通りのリファレンスとなっています。

長々と書いてきましたが、現在のわが家リファレンス・システムはDV-AX10からM-AX10(BTLモード)へ直結、BHをつなぐというこれ以上ないシンプルなものになっています。C-AX10がなくなってしまい、代替のプリを導入することがかなわないものですからもうこれで致し方ないのですが、プリは早急に何とかしなきゃいけませんね。扱い勝手も悪いし、何より試聴に手間がかかっていけません。

そのうち自作するしかないかなぁ、などとまた良からぬことを考えているところです。自作といったって基板キットを買ってきて自分なりにアレンジしようというだけですけどね。やると決めたらまたこちらで連載しようと思っています。

アナログ関連とスピーカーは、追って別エントリを立てますね。

仕様変更~文字を大きく2014/01/24 17:34

小生、自分が老眼のクセにブログの文字がずいぶん小さいことを気には病んでいたんですが、「眼鏡をかけたら見えるからいいか」と放置していました。でも、やっぱりこれじゃ見えにくいこと甚だしいというものですよね。

というわけで、ご同輩からお叱りを頂く前に、fontタグを使って1段階文字を大きくしました。デフォルトで文字のポイント数を決められるとよいのですが、どうもやり方が分からなかったもので、逐次やっていくこととします。

これからも末永くお付き合いを賜りますよう、お願い申し上げる次第です。

わがリファレンス・システム(アナログ編-その1)2014/01/25 16:49

さて、わがリファレンスのアナログ編です。アナログプレーヤーもパイオニアのPL-70ですが、これは珍しいことに自費購入したものです。

これを購入したのはまだ学生の頃だったと記憶します。PL-70を購入するまでは高校生の頃に兄からお下がりでもらったシステムコンポ(トリオ製)のアナログプレーヤーを、もはや原形をとどめなくなるまでに改造しまくって使っていました。当時は江川三郎氏のアナログ理論に傾倒し、吸着式のオーディオテクニカAT666スタビライザーを購入、プラッターとの間にガラスを敷いて共振を分散させ、FGサーボのダイレクトドライブだったのを糸ドライブに改造(これはワウが抑えられず、大失敗となりました)、感度が鈍くろくな音がしなかったS字アームを諦め、ガラス2枚重ねのピュアストレート・アームを自作するところまでやったものです。

そういえば、有り合わせの角材を使ってではありましたが、江川式「絶対アーム」も実験したなぁ。あまりといえばあまりの音質向上にアナログの遥かな可能性を感じ、そしてとてつもない扱い勝手の悪さに辟易したものでした。いわゆる「手回しターンテーブル」の実験も行いましたが、ワウだらけでとても音楽を楽しむ雰囲気ではなかったものの、モーターを使わないと音はこんなに澄み渡るものかという感激を味わうことがかないました。

とまぁ、こんなことをやっていてプレーヤー本体がまともに動き続けるわけもありません。10年近くの実験の後そのプレーヤーは昇天しました。で、次のプレーヤーを探している時にPL-70と巡り合った、というわけです。

PL-70は1979年の発売ですから今年で35年にもなります。確かメーカー希望小売価格15万円くらいだったと記憶します。S字のセミロングアームでクオーツロックのDD方式ですから、ピュアストレート・アームでベルトドライブの江川式とは相容れないプレーヤーでした。

私がプレーヤーを壊して次の製品を探していたのは、ちょうど折良くというべきかCDが爆発的に普及し始めた時期と重なり、アナログプレーヤーはあまり省みる人もなく、中古売り場の大きな面積を占めながらあまり物が動かないという状況でした。その状況で元箱はおろか取説も付属シェルも重量級ウエイトもアーム調整用のレンチも付属しない「現状渡し品」として店の隅に置いてあったのがPL-70でした。3万8,000円くらいだったっけ。店頭で何の気なしに持ち上げてみようとして、思わず腰を痛めそうに重かったもので、その場で「これ下さい!」と店員さんに声をかけちゃった次第です。

PL-70

パイオニア PL-70 1979年発売 ¥150,000(当時)
わが家のプレーヤー風景。何かとゴチャついているのはご勘弁願いたい。写真ではパイオニアJP-501ターンテーブルシートが載せられているが、オーディオテクニカAT677→オヤイデMJ-12と変遷して、現在はオヤイデBR-12を使用している。

このプレーヤーにはいろいろ手がかかりました。何たってこれだけ安い現状渡しなんですから、並みの程度だなんて思う方が間違っているというものです。

まず、標準のアームウエイトでは現代のカートリッジ&シェルがほとんど使えません。PL-70の開発当時はローマス/ハイコンプライアンスのカートリッジが全盛の頃で、付属シェルは何とカーボングラファイト製で7.8gだったといいます。現代のシェルでそれに匹敵する目方というとSMEの超軽量穴あきシェルS-2Rですら8gほどあるようですからもはやお手上げ。カートリッジ本体の質量も時代を追うに連れて高まってきているようですし、本当に適合するカートリッジが少ないことに頭を抱えたものでした。

これはもう重量級のカウンターウエイトを作るしかありません。といったって旋盤が手元にあるわけじゃなし、ここは一工夫と頭をひねりました。まず軽量級のカウンターウエイトに、荷造り用のクラフトテープを糊の面を外側にしてリング状に貼り付けます。そしてそこに東京防音の鉛シートP-50を適当なサイズに切って貼り回していきます。「まぁこんなもんかな」というところで、プリセットの針圧目盛りの約30%減でバランスするようになりました。

着脱式サブウエイト

クラフトテープと鉛シートで自作したカウンターウエイトの増量用リング。ウエイトの外側へはめ込んで使う。

これで増量用のウエイトリングは取り外しが可能になり、カートリッジの適合範囲が飛躍的に広がりました。SPUなどの極端に重いカートリッジはまだこれでもちょっとした裏技を用いないとバランスしませんが、私のSPUはアダプターを介して一般シェルに取り付けてあるので、現状でも全然問題なくバランスしています。

アーム高さ調整用レンチ

アルミのチャンネルとボルトナットで自作したアーム高さ調整用レンチ。穴がおかしなところへあいているが、寸法を測りもせずに当初そこへボルトを取りつけたらレンチの用をなさず、まじめに実測して穴をあけ直した次第。いやはや、お恥ずかしい。

お次はアームの高さ調整用のレンチです。買った当初は高さ調整の方法が分からなくて四苦八苦しましたが、何とか専用のレンチでアームベース周辺のリングを回してチャックを緩める方式だと判明、そのレンチが付属していなかったもので、これも自作しました。見栄えは非常に冴えないヤツですが、パイオニアの純正レンチより何倍も強度があり、扱いやすいものに仕上がったと自負しています。

さて、これでアーム回りはしっかりと調整できたはずなんですが、どうも音を聴いているとキンシャンとやかましく、全然カートリッジの持ち味が発揮されたサウンドとはいえません。おかしいなとアームをしげしげと眺めたら止んぬるかな、アームの先端が僅かに上を向いているじゃないですか!

PL-70のアームはS字型ですから、カートリッジ側から向かって時計方向に少しだけ曲がって取り付けられているのかと思ったのですが、後述する修理の職人さんが一見して「あぁ、これはアームパイプが歪んでいるんですよ」と喝破、ちょっとした置き台と緩衝材を持ち出し、その場で曲げ直してくれました。この修理がかなったのが2013年、確か購入が1988年ごろだったと記憶しますから、何と25年も歪んだまま使っていたことになります。やれやれ。

それでは曲げ直すまで私がどうやってこのアームを使いこなしていたのかというと、アームのサポート部分をえいやっと持ち上げ、思い切り尻上がりにして使っていたのです。大半のカートリッジはこうしてやることで音域バランスが整いましたが、SPUなどの背が高いカートリッジはダストカバーへ接触するぎりぎりまでサポートを上げてやってどうにかこうにかといったところでした。しかも、音を聴きながらの微調整が必要ですから、本当に神経をすり減らしながらの調整だったものです。

これでどうやら何とかまともな音は出るようになりました。しかし、今度はハウリングです。当初はほとんど気にならなかったのですが、自宅リファレンスのスピーカーに30cmのウーファーを入れた頃からハウリング・マージンの低下が著しくなっていました。特に大編成のクラシックなどは超低域のノイズまみれになってしまい、大音量では聴けたものではありません。

どうなっているのかと調べてみたら、よりにもよってアーム直下のインシュレーターが固着してしまっています。その状態でハウリング・マージンを測ってみると、常用音量よりほんの気持ち上の時点で早くも超低域にものすごいノイズが現れます。これじゃ全く使い物になりません。

そこで、テニスボールから始まって幼児用のふわふわのボールや自転車のタイヤチューブなど、いろいろと下に挟んで試してみました。いずれもマージンには不足がなくなるのですが、音質がコロコロ変わってビックリでした。テニスボールは上品で穏やかな質感となり、幼児ボールは何だか中低域が緩んでだらしない感じ、自転車チューブは力感がみなぎりピラミッド型の非常に好ましい再現となります。ただ、見た目はどうにもいただけません。

それで、「そのうちケース入りの自転車チューブ・インシュレーターを作ってやろう」と思っていたら、アコリバに先を越されちゃいましたね。まぁこの手の自作ボードは太古からあるものですから、どっちが先と今さら言い募るものじゃないですけれど。

インシュレーター

ヒノエンタープライズ扱いで発売された限定品のインシュレーター。堅木の間に粘弾性材を挟んであり、いろいろな機器の振動対策に有効なグッズである。アナログ用にハウリング・マージンを増すため、耐震ジェルシートを張り込んだりもしてみたが、マージンは上がるものの音が少しふらつく感じもあり、良し悪しといったところだった。

それで結局、たまたま試聴でわが家にやってきた堅木2枚の間に粘弾性材を挟んだインシュレーターの音質が気に入ったものですから、それをそのまま譲ってもらいプレーヤーに挟んで使っていました。これだとマージンが常用音量+10dBくらいで、ちょっと気合を入れて大音量を鳴らそうとするとまだ悲鳴が上がることがありましたが、音質的にはようやく満足したものです。

程度の悪い中古プレーヤーをねじ伏せてなだめすかし、どうにかこうにか使っているわがアナログ・ライフは、特に古いプレーヤーをお使いの人にとっては「不具合の見本市」みたいなものでしょうね。同様の不具合を抱えていらっしゃる人に、私の取った対策が何かのお役に立つといいんですが。

その後、私のプレーヤーは劇的な変化を遂げます。長くなっちゃったので、この辺のくだりはまたエントリを改めますね。

わがリファレンス・システム(アナログ編-その2 プレーヤーを修理する)2014/01/27 11:24

2011年ごろからリファレンス・システムのアナログがめっきり調子を落とし、実用に耐えなくなってきました。レコードの外周は何も問題ないのですが、内周へ近づくに連れ歪みが劇的に増加し、聴くに堪えなくなってしまったのです。もともとアナログは多かれ少なかれ内周は音質が劣化するものですが、とてもそういうレベルではありません。これは明らかにどこかが故障している、という音です。

さぁそこから故障箇所の特定までが大変でした。まずカートリッジを交換してダメ、シェルリードを交換してダメ、シェルを交換してダメ、フォノケーブルを交換してダメ、とここまでは交換した製品の調子は全く問題なしでした。

ならばフォノイコライザーか、とプリアンプのパイオニアC-AX10を修理に出し、その間にいろいろなメーカーのフォノイコを借りました。それぞれに魅力的な音を聴かせてくれるのですが、やはり音の傾向は違うといえ、内周のひどい歪みはいくらか軽減したかな、といった具合です。C-AX10もいくらか劣化は進行していたようですが、主因というわけではなかったようですね。

ならばと片っ端から接点という接点を磨きまくってみましたが、音質は大きく向上したものの内周の歪みは「いくらか良くなったかな」という程度。仕舞いにはパワーアンプからスピーカーまで交換してみましたが、やっぱり大きな向上は見込めず。

そもそもわが家のリファレンス機器で最も古いのがアナログプレーヤーで、そこが問題じゃないかとは薄々感づいていました。しかし、30年以上も前の製品をメーカーへ送って修理ということはほぼ不可能だろうと、どこか心の片隅で「見ないように」していた感が否めません。しかし、ここまで明白に事実関係を突きつけられてしまうと、もう認めないわけにいきません。散々苦労したアナログの音質劣化は、アナログプレーヤーの不調が原因だったのです。

何度も書きますがわが家はひどい貧乏暮らしで、アナログプレーヤーが故障しました、それじゃ新しい製品に買い替えましょうか、とは簡単にいきません。特に現代のプレーヤーでPL-70と同クラスの音質を目指そうと思ったら、どう甘めに見積もっても30万円クラスのものが必要になってきます。そうでなくてもプリはなくなってしまったし、マルチアンプの実験も再開したいし、などと考えていたら、金はいくらあっても足りないくらいです。

とはいえ、プレーヤーがこの調子では仕事になりません。というわけで、にっちもさっちもいかなくなってしまったところへ救いの神が現れました。まるでタイミングを見計らっていたかのように、ベルドリーム・サウンドが「レコードプレーヤー、トーンアームの修理承ります」というサービスを開始したのです。ベルドリームの鈴畑文雄代表は、彼がある名門アナログプレーヤー・メーカーで広報を務められていた頃からずいぶんお世話になっているものですから、このたびも早速連絡してみた次第です。

すぐに修理工房の手配をつけてくれ、「修理ついでに取材もさせて下さいよ」という願いを鈴畑さんが聞き入れてくれたもので、カメラ片手に工房まで行ってきました。

わが家と同県内といっても埼玉は東西にやたらと広く、車で2時間以上かかって工房へ到着、出迎えて下さったのはご主人の吉崎治さんでした。工房の中にはちょうど地方からの依頼で修理に入ったばかりというRCAの巨大なコンソール型プレーヤーをはじめとする修理を待つ機器が並んでいます。修理の難しいことで有名なQRKなど、往年の名器がいくつも展示されていますが、これらは当然すべて吉崎さんが手を入れてコンディションを整えられた製品だそうです。

あらかじめ電話で症状を伝えてはありましたが、改めて現物を診てもらうと、幸いなことに吉崎さんはPL-70についてよく知悉されているそうで、「それじゃ早速見てみましょう」ということになりました。

まず音を出してみる。「なるほど、歪みっぽいですね」

工房へ着いて早速まず症状を聴いてもらう。「確かに歪んでますね。調べてみましょう」

まず「アームの先端が上を向いている」件は、先のエントリで書きましたがアームを見るや否や「あぁ、これはパイプが曲がっているんですよ。古いプレーヤーにはよくあることです」と一言。適当な台座をかませてあっという間にほぼ水平レベルへ曲げ直してくれました。

上を向いていたアームパイプは手早く曲げ直してくれた

アームパイプは下に台座を置いてタオルを敷き、絶妙の手加減でほぼ水平に曲げ直してくれた。「やりすぎちゃったら元も子もないですからね、これくらいにしときましょう」と吉崎さん。

ついでにインシュレーターが1個固着している件も伝えたら、「それも心当たりがありますよ」と当該の1個を外し、何やら取り付けネジの近辺をちょいちょいと削ったと思ったら、見事ごく普通にインシュレーターが働くようになりました。ごく小さなバリが引っかかってインシュレーターの動きを止めてしまっていたそうです。やれやれ、25年も何を苦労していたのやら。

いよいよ本題、内周の歪みです。まずアームを取り外し、吉崎さんの手持ちのパーツの中から何とか具合の合いそうなデンオンのアームを仮付けして音を聴いてみます。そうしたら内周までほとんどノイズレスに音が出るじゃないですか。これはアームの不調だな、と要因が特定できました。

デンオンのアームをつけてみる

吉崎さんお手持ちのデンオンのアームを仮付け。ややオーバーハングが足りないが、それに起因する歪み以外は聴こえてこない。どうやら「アームが原因」と特定してよさそうだ。

個人的に、PL-70は外径20cmもあろうかという巨大なDDモーターを搭載しており、そこからノイズが漏れ出してカートリッジへ影響を与え、歪みが増えている可能性を何よりも危惧していました。モーターだとまずパーツ交換は不可能でしょうからね。しかし、アームなら何とかなりそうです。心の底からホッとしました。

吉崎さんは外したアームを持ってゆらゆらとサポート部分を動かしてみられます。どうやら特に左右方向のベアリングが渋くなっているようだ、とのこと。後で原因を伺ったら、このアームはオイルダンプ式なんですが、そのダンピング用オイルがサポートのベアリングへ垂れて粘らせていたのではないかということでした。

アームを揺らしてサポートの動きを診る

サポート部分を持ってアームを揺らし、ベアリングの潤滑を確かめる吉崎さん。「特に左右方向が粘っているようですね」

もちろん私はこのアームがオイルダンプだと知っていましたし、横にすることはおろか、僅かに傾けたことすらありません。フォノケーブルを交換する際にも細心の注意でまっすぐにしていたつもりです。また、ご存じの通りダンピング用のオイルは大変に粘度が高く、水飴のようなものです。ほんの2~3分傾けたくらいでこぼれるようなものではありません。

しかし、長年このプレーヤーを使ってきて、こういう音質劣化をきたすようになったのはごくここ1~2年でした。ということはつまり、20年以上も前に何らかの手荒な扱いで漏れたダンピング・オイルが少しずつ滴下し、2011年になってサポートのベアリングへたどり着いた、ということしか考えられません。ずいぶん長くかかって炸裂した時限爆弾だったというほかありませんね。

「このアームならよく知っているし、分解清掃とグリスアップをしましょう」ということになりました。そこまでやってもらうのならと、ついでに内部配線も新しいものに替え、またダンピング・オイルが劣化して粘度が恐ろしく高まっていたのでそこも清掃、適正な粘度のオイルをバスに満たしてもらいました。

ダンピング・オイルは固化してバスにこびりついていた

固化してオイルバスにこびりついたダンピング・オイル。適正粘度の新しいオイルに交換してもらったが、古いオイルを掻き出して清掃するのが大変だったとか。

いったんプレーヤーを預け、数日後「できましたよ」という電話をもらったので再び車で工房へ向かいます。修理の成ったPL-70は細かな汚れやホコリも拭い落とされ、ピカピカになっていました。

工房の装置で音出しをしてみると、内周まで歪みらしきものは全く看取できません。万歳、わが愛器が完全によみがえりました。いや、正確に言うなら「買った時よりずっといいコンディションに生まれ変わった」というべきですね。アームはまっすぐだしインシュレーターは動くし。

恐るおそる「で、おいくらですか?」と聞いてびっくり! 具体的な金額を書くのは差し障りもあるので控えますが、覚悟していた金額の半額以下でした。今の日本じゃビギナー向けのプレーヤー(ミニコンポ用みたいなのは除きますけどね)もおいそれとは買えないほどの格安料金です。

また、吉崎さんは大変な波乱万丈の人生を歩んでこられた人で、その一代記を伺うだけで何時間も楽しく過ごすことのできる人でした。また語り口が実に巧みで面白く、ついついお仕事の邪魔をして何時間も居座ってしまいました。また何か修理をお願いすることがあったらぜひ伺いたいものです。

ベルドリームのDL-102専用シェルリードを実験

全快したわがPL-70で、ベルドリーム特製のデノンDL-102専用シェルリードを試す。2本しか出ていないDL-102の端子からシェルの4端子へ接続することが可能な"分岐ケーブル"である。アームがしゃっきりとまっすぐ伸びていることがお分かりいただけるだろうか。

この修理が済んでもうすぐ1年になりますが、わがPL-70はいまだ絶好調、これで後継プレーヤーをしばらく心配する必要はなくなりました。35年も前のプレーヤーがいまだこういう商売をしている人間のリファレンス機器として現役というのはいささかからず問題ではあるのですが、貧乏ライターの情けない行状とご寛恕いただけると幸いであります。

改めてベルドリーム・サウンドの鈴畑さん、工房の吉崎さん、その節はお世話になりました。

わがリファレンス・システム(アナログ編-その3 カートリッジ周辺)2014/01/29 00:00

アナログ関連のエントリを続けます。プレーヤーは2回のエントリで詳述したパイオニアPL-70でここ25年間不変ですが、カートリッジやターンテーブルシート、スタビライザー、フォノケーブルといった周辺機器・アクセサリー類はたびたび変わっています。

カートリッジはメインのリファレンス機が4機種。MMタイプはオーディオテクニカAT150MLXを長年愛用しています。これはフォノイコのMMポジションを試聴する際に加え、適正針圧が0.75~1.75g(1.25g標準)という昨今珍しくなったローマス/ハイコンプライアンス型なので、そちら方面の代表としても活躍を願っています。

AT150MLX

オーディオテクニカ AT150MLX ¥35,000(税抜き)

MCのハイインピーダンス型はおなじみデノンDL-103です。これはもう定番中の定番ですし、いまさら紹介するまでもありませんね。日本初のステレオMCカートリッジにしてNHK-FMの音の要ともなった名器中の名器です。ずいぶん長く使った103が先年ついに針先の寿命を迎え、ただいま針交換後の新しい個体を慣らし運転中です。

DL-103

デノン DL-103 ¥35,000(税抜き)

MCのミドルインピーダンス・タイプはオーディオテクニカAT-OC9/IIIを愛用しています。このワイドレンジと解像度、そして最高域まで鋭く切れ上がる持ち味はとても6万円台とは思えません。決して万能型万人向けというわけではありませんが、故・長岡鉄男氏が推奨された「A級外盤」などを楽しむにはうってつけのカートリッジだと思います。

AT-OC9/III

オーディオテクニカ AT-OC9/III ¥62,500(税抜き)

MCローはこちらもご存じオルトフォンSPUです。世界初のステレオカートリッジにしてまだ生産が続く驚異のロングセラーですが、現代カートリッジでこういう味わいを持つ製品はほとんどなく、まさに余人をもって代え難いカートリッジというべきでしょうね。ベースモデルのクラシックIIは適正針圧が4gと重いので、こちらはハイマス/ローコンプライアンス型の代表としても活用しています。

SPUクラシックGII

オルトフォン SPUクラシックG MkII ¥78,000(税抜き)

ただし、私の愛用するSPUは重いGシェルを脱ぎ捨て、オーディオ工房のハヤシ・ラボが製作・販売するアダプターを介して一般シェルに取り付けています。これをやると「あのSPUが!!」と驚くくらいハイスピードで現代的なサウンドになるんですよ。最近になって神奈川県は湘南台のオーディオショップ「でんき堂スクェア湘南」でも、同じように使えるアダプターを売り出しましたね。

ハヤシ・ラボSPUアダプター

ハヤシ・ラボのSPUアダプター(写真右 ¥15,000)。左はアナログ全盛期に商品化されていたオーディオクラフトのSPUアダプターOF-3a(¥5,000 当時)。

実はハヤシ・ラボのアダプターとでんき堂スクェア湘南のものは、全く構造が違います。後者はかつてオーディオクラフトが発売していたアダプターとほぼ同形状で、天面に大きなアルニコマグネットが突き出しているSPU本体の形状に合わせてくぼみを作り、前方へ向けて僅かに傾けたものですが、前者はアルニコマグネットを左右からネジで締め付け、より振動の基点を明確化しようという設計の方針を見て取ることができます。

でんき堂スクェアSPUネイキッド・アダプター

でんき堂スクェア湘南謹製のSPU"ネイキッド"アダプター(¥5,000 税抜き)。往年のオーディオクラフトとほぼ同じ構成で、価格まで揃えてきているのがニクい。

両者の価格はだいぶ違いますが、こういう構造の違いと製造の難しさがそのまま価格差になっていると見て間違いないでしょう。両方とも実際に使ってみましたが、確かにそれなりの音質差はあります。前者がよりがっちりと音像が決まり、音場も広大に広がります。後者は前者に比べるとやや緩い感じですね。しかし、でんき堂スクェア湘南のアダプターが使えないということでは全然ありませんから、ご予算と音の好みで選ばれるのもよいと思います。

ちなみに、SPUの本体を外す際にはシェルリードを絶対ねじってはいけません。必ずまっすぐ引き抜くようにしましょう。ねじり方向の力が加わるとSPUの内部配線は非常に断線しやすいのだそうです。以上、オルトフォンジャパン坂田清史さんのお話からでした。

ほかにもカートリッジは購入品と貸与品を含めて結構な数を持っています。オーディオアクセサリー誌で連載しているハイCP機を中心とした「炭山太鼓判」でレファレンス・カートリッジの1本としていたオルトフォンMC-09Aは残念ながら生産完了になっちゃいましたが、2万円と少しで購入できる超廉価MCカートリッジながら結構MCらしさ、オルトフォンらしさを聴かせる逸品でした。次にMCカートリッジを取り上げる時には、同社の新しいMC-Qシリーズで初加入した末弟MC-Q5を使うことになると思います。これも3万円を切っているから相当のハイCPといって間違いありません。

MC-Q5

オルトフォン MC-Q5 ¥29,000(税抜き 1月末発売)

大昔に購入していまだ実働状態にあるカートリッジの中で、面白いものといったら断然ビクターMC-L10ですね。学生時分に必死のバイトで購入したL10は、友人と大酒を飲みながら音楽を聴いていたと思ったら、翌朝針先が消失していることに気づいてしばらく立ち直れなかったものでした。その後、20世紀の終わり頃に突然オーディオユニオンから放出品が出たという情報をキャッチ、慌ててお茶の水へ走りゲットしたのが現用の個体です。

MC-L10

わが家のMC-L10。ゾノトーンのヘッドシェルに取り付け、シェルリードは在野のアナログ職人モスビンさんがMC-L10専用に作って下さった特製品を使っている。このリードへ交換した時にはあまりの解像度と抜けの良さ、爆発的な力感に肝をつぶした。すごいノウハウと耳をお持ちの人である。

L10の後継にして長岡氏が長くリファレンスとして使い続けられたMC-L1000も手元に1個あるのですが、残念ながら片ch断線してしまっています。どこかにこれが修理できる業者さんはおられないものですかねぇ。

あと面白い変り種カートリッジといえばソニーXL-MC3が挙げられるかな。独自の「8の字コイル」で空芯MCながら結構な出力電圧を確保していて、ソニーらしい肌合いの優しい表現の中にかなりしっかりした1本の芯を持つ、なかなかの力作だったと思います。わが家では現在もそういう音を存分に楽しませてくれています。

XL-MC3

ソニーXL-MC3はテクニカのAT-LT13aシェルに取り付けている。シェルリードは直出しで、リード込みで3gしかないという驚異的な軽量カートリッジだった。軽量シェルに取り付けるとバランスしないアームも多いのではないか。

ヘッドシェルは長年オーディオテクニカのAT-LHシリーズを愛用しています。特にAT-LH13occは結構たくさんのカートリッジに使っているなぁ。ご存じの人も多いかと思いますがAT-LHには13、15、18の3種類あって、それぞれ自重を表しています。LH15を標準とすると、LH13はブレード部が短く、LH18はコネクター部がアルミ合金からステンレスに変更されています。

AT-LH13occ

オーディオテクニカ AT-LH13occ ¥6,200(税抜き)

それぞれに音質的な持ち味はあるのですが、概して重い方が低域の馬力と重量感が出て、軽い方が俊敏で切れ味鋭い音になる傾向です。カートリッジによって相性が出てくると思いますが、私はどちらかというと俊敏な音を好むのでしょうね、LH13を使いたくなることが多いように思います。それに対して、LH18は若い頃にその馬力感が気に入って大いに愛好したものですが、昨今はめっきり起用することが減りました。わが家では慢性的にヘッドシェル不足なんですが、それでも何本か遊んでますからね。

シェルリードはまずリファレンスとしてオーディオテクニカAT6101を挙げねばなりません。とにかくこれほど安価で音のしっかりしたリード線もないものですからね。ただし、それでは本当の高音質には不足していることも重々承知しています。これまでまぁ数え切れないくらいのシェルリードを体験してきましたが、絶対的なナンバー1を挙げろといわれると困惑してしまいます。それぞれにあまりにもキャラクターが違い、同じ土俵で点数をつけるのが困難なのです。

思い出すままにキャラクターを記しておきましょうか。まずAT6101(¥1,000 税抜き)は中~高域が自然で伸びやかですがやや低域不足、いくらか素っ気ない感じもあります。同社AT6106(¥4,800 税抜き)はワイドレンジで分厚く実体感と色彩感が豊か、しかしどことなく自然の色味というよりカラーテレビの色を見ているようなイメージがあります。ZYXシェルリード・ワイヤー(¥4,800 税抜き)は極めて色づけ少なくストレートな高解像度ですが、若干淡彩に感じる部分があります。ゾノトーン8NLW-8000プレステージ(¥7,600 税抜き)は肉太で抜けが良く鮮やかな表現が魅力ですが、ちょっと高域方向へキラッと輝くところがあってカートリッジを選びます。オーグライン「クラシック」(¥11,000)は輝かしい音楽成分が耳へ猛烈に押し寄せ、さながら黄金の大洪水といったイメージ、同「ボーカル」(同)はすっきりと伸びたバランスが声を凛と際立たせます。

まだまだありますが、今回はこんなところで。とまぁ書いてきた通りのイメージなもので、「どれを本命にするんだ!?」といわれると困惑してしまう、というわけです。といってカートリッジとの相性をスクランブルテスト的にチェックするのも大変だし、ということで、基本はAT6101に置きつつ、いろいろなリードをカートリッジごとにある程度使い分けているというのが正直なところです。なお、シェルリードの画像は省略させてもらいました。

アナログについて書き始めると、ホント止まらなくなっちゃいますね。いったんここでエントリを分けたいと思います。